SAP ERPをミクシィが導入すると費用は約5150万円。 誰でも見積もり可能なツールをなぜSAPが公開したのか
業務システムを導入する費用はいくらかかるのか? これまでベンダやSIerに見積もりを依頼してみないと本当のところ分からないものでした。
例えば、自分の会社にERPやCRMを導入したらいくらかかるのか? 情報システム部門の人でさえ「見積もりをとってみないと分からない」ということは多いと思います。しかし本当に見積もりを依頼するのなら、その前の段階で、だいたい500万円かかるのか1千万円なのか5千万円なのか、ざっくりとした目安は知りたいもの。
SAPが公開している「オンライン・ソリューション・コンフィギュレーター」は、いままでベールに包まれていたといっても過言ではないERPの料金の一端を明らかにしてくれるツールです。中堅、中小企業向けの見積もりに利用できます。
例として、株式会社ミクシィにSAP ERPを導入したらいくらかかるのか? ざっくり見積もってみることにしましょう(ミクシィを選んだのには特に他意はありません。公開企業で人数が分かり、親しみやすかったためです)。
まず業種を選択。「サービス業」に、続いて従業員数とERPを利用するユーザー数を入力します。
ミクシィの従業員数は公開情報によると282人。この見積もりプログラムは従業員数を入力すると、自動的にその規模に見合ったユーザー数(ERPを利用する人数)を計算してくれます。282人に対するユーザー数は85人とでてきました。社内の経理部門に関連する人と、経営上の数字を参照する管理職がユーザーだと想定すると、ちょっとこのユーザー数は多い気がするので、60人くらいに修正しておきましょう。
「OK」ボタンを押せばすぐに見積もりが行われます。合計金額は約5150万円でした。
この値段はソフトウェアのライセンス料金、サーバ料金が含まれているとのことですから、SAP ERP導入の参考になるだけでなく、他社のシステムを導入する際の比較材料にもなるでしょう。詳しい使い方は、TechTargetの「1分でできるSAP ERP導入費用試算」でも説明されています。
なぜSAPはこんなツールを作ったか
なぜSAPはいままで分かりにくかった導入料金を明らかにするようなサービスを始めたのでしょうか? 少し勘ぐってみると、やはりSaaSの登場が大きいのではないかと思います。
SaaSは1ユーザー当たり1カ月いくら、という料金が明らかになっていて、ハードウェアの導入や維持管理も不要、ソフトウェアやハードウェアの保守契約も不要なため、導入時のカスタマイズやサポートを除けば非常にはっきりとした料金体系になっています。
一方で、既存のオンプレミス型業務システムは、ライセンス料金、サーバ費用、システム構築料金、サーバやソフトウェアの保守契約などさまざまな要素があり、実際のところいくらかかるのか? 見積もりを依頼してみないと分かりにくいものでした。
導入する立場になって考えれば、料金が明確なSaaSに注目してしまうことは十分想像できます。特に中堅中小ではその傾向が強いはず。そうした潜在顧客に、ユーザー自身でSaaSと料金の比較検討ができるセルフサービスツールとして使ってもらうべく、SAPはこのツールの公開に踏み切ったのではないかと、僕は想像しています。
NECは400億円
ところで、NECは海外も含めた主要なグループ企業約50社の基幹業務システムをSAP ERP 6.0を採用して全面刷新するそうです。その総投資額は400億円。連結従業員数が約15万人の大企業は、やはりケタが違います。