エンタープライズ・マイクロアプリケーションとは何か? 業務アプリケーションは新しい段階へ
業務アプリケーション大手SAPのRegina Sheynblat氏が「Micro Applications - What? How? Why?」というブログのエントリで、「エンタープライズ・マイクロアプリケーション」と呼ばれる、SAPが取り組んでいる新しい業務アプリケーションの形態について解説しています。
マイクロアプリケーションとは何か? Sheynblat氏は次のように紹介しています。
With Enterprise Micro Applications, there is no longer the need to launch a standalone enterprise application. Instead they deliver targeted information and enterprise application functionality based on role, requirement and channel of choice - mobile, imbedded, or desktop. They are lightweight application extensions that allow easy consumption of enterprise data, when and where you need it.
エンタープライズ・マイクロアプリケーションでは、もはや単一の業務アプリケーションを起動する必要がない。
その代わり、特定の情報や業務アプリケーションの機能を役割や伝達経路、例えばモバイルや埋め込み情報、デスクトップなどに応じた形で利用者に提供する。それはライトウェイトなアプリケーションの機能拡張であり、利用者は必要なとき必要なところで業務データを参照することができる。
いままでSAPが提供するソフトウェアといえば、大規模な業務アプリケーションでした。しかしマイクロアプリケーションのコンセプトは、「利用者はアプリケーションの機能すべてをまとめて利用したいわけではない」という事実からきている、とSheynblat氏は説明します。
業務アプリケーションがウィジェットに
SAPが公開している「MicroApplications Overview」というWebページでは、マイクロアプリケーションがどのようなものか、技術的な側面から解説されています。画面を見ればその特徴をひと目で理解することができるでしょう。
この画面では、誰でも自分のWebサイトやポータル画面が作れる「Googleサイト」に、Googleカレンダーなどと一緒に業務アプリケーションからの情報が埋め込まれています。
このように、業務アプリケーションを立ち上げて情報を見るのではなく、普段使うアプリケーション中にウィジェットとして業務アプリケーションの情報を埋め込んだり、スマートフォンの画面で業務アプリケーションの情報を参照するといったことが、SAPのいうマイクロアプリケーションのようです。
業務系と情報系の融合で新しい段階へ
いままで受発注処理、在庫管理、注文状況や売上げ情報の把握などを行うには、業務アプリケーションを起動し、必要な画面を選ぶ、といった操作が必要でした。そのためには業務アプリケーションの複雑なメニューや用語を理解して使いこなす必要がありました。そして「なんて使いにくいんだ!」という多くの不満もありました。
エンタープライズ・マイクロアプリケーションは、そうした業務アプリケーションが企業の中で成熟し、使われていくための1つの方向性を示しているようです。
セールスフォース・ドットコムが先月発表した「Salesforce Chatter」も、同じような方向性を示しています。Chatterでは、セールスフォース・ドットコム自身がTwitterのようなマイクロブログツールを提供し、そのつぶやきの中で業務アプリケーションの情報も参照できるようになっており、やはり情報系アプリケーションと業務系アプリケーションの融合を提案しています。
SAPは以前紹介した記事「Google Wave専用のビジネスプロセスツールをSAPが開発中、コード名「Gravity」」で、Google Waveと業務アプリケーションを融合しようとしていますし、「プレゼンしながらTwitterのつぶやきをリアルタイムでPowerPointに表示できる部品、SAPから」で紹介したように、情報系アプリケーションの活用にも非常に熱心に取り組んでいます。
業務系アプリケーションが、ふだん利用している情報系アプリケーションと融合することで、利用者は日常のなかで業務アプリケーションの情報に接することができます。それは、これまでの「業務アプリケーションは業務を効率的に処理するためのもの」から、業務アプリケーションによって蓄積された情報を分析し日常的に参照可能にすることで、それをビジネスへ活かすという新たな業務系の役割が見えてきます。
そして単に情報系との融合だけではなく分析された情報、例えば顧客の傾向、商品の売れ筋、在庫の増減、季節要因などであれば、より活用しやすくなるでしょう。SAPがBusiness Objectsを買収し、それ以外にもここ数年で大手BIベンダが相次いでオラクルやIBMなどに買収されたことも合わせて考えると、これからの業務アプリケーションが向かう方向が見えてくるのではないでしょうか。