「データセンターは発電所のようなもの」ニコラス・カー氏がグーグルにてクラウドを語る
2003年の論文「IT Doesn't Matter」(ITは重要ではない)でIT業界に大きな議論を巻き起こしたニコラス・カー氏。最近でも論文「The End of Corporate Computing」や書籍「The Big Switch(邦題:クラウド化する世界)」などで注目されています。
そのカー氏が、グーグルが主催しロンドンで開催されたクラウドコンピューティングのイベント「Atmosphere」で講演し、そのビデオが公開されました。
講演のタイトルは「Era of the Cloud」(クラウドの時代)です。30分の講演から主な発言を拾ってみました。
「企業は競争力を高めるためにテクノロジーを使う、それは時代が変わっても変わらない」
「クラウドのビジネスでの利用がどうなるのか。それは歴史をさかのぼってみれば分かる。1850年代、ニューヨークで鉄工所のオーナーだったHenry Burden氏は巨大な発電機を所有していた。その当時、あらゆる工場は操業のために発電機を所有する必要があったのだ。」
「しかし1920年代、発電ビジネスに抜本的な変化がもたらされた。その一例が、ウェスティングハウスの中央発電所だ」
「それまでは、工場のとなりに巨大な発電機の歯車を置かなければならなかった。いまでいえば、SAPやOracleを動かしているようなものだろう。しかし当時それが唯一の方法だった」
「クラウドコンピューティングも同じことが起こるだろう。ただし、ITが電力と似ているといっているわけではない。両社は異なっている。しかしビジネスリソースという点では同じだ。電力はビジネスのプラットフォームであり、その上にアプリケーションを構築するといったことにあたるのだから」
「現在、企業のサーバは平均すると能力の20%くらいしか使われていない。一方で運用にかかるコストの70%はルーチンワークに費やされており、企業の競争力につながっていない」
「これからのクラウド時代では、ITを運用するためのコストが開放され、生産的な用途に使えるようになる。これがクラウド時代の新しいモデルだ」
「(オレゴンにあるグーグルのBig Daddyデータセンターの写真をスクリーンに映し)これがウェスティングハウスの発電所のように、新しい時代を象徴している」
「エリック・シュミット氏が1993年、当時まだサンのCTOだったころ、これから何が起きるのかをシンプルな言葉で予想している。それは『ネットワークがプロセッサと同様に高速になれば、コンピューティングはネットワークを通じて届けられるだろう』これがいま起きていることだ」
「この変化は、コンシューマサイドではすでに起きている。かつてはPCを所有し、そこでソフトウェアを動かすのがアマチュア技術者の趣味だった。しかしいまは Webブラウザを立ち上げ、ブログやSNSを楽しむように変化している。ビジネスはこのトレンドをフォローしていくだろう」
「PC革命はだれにもパーソナルコンピューティングを持てるようにした。クラウド革命では、だれでもデータセンターを持てるようになる。そしてクラウド革命は、 コンピューティングのコストを下げ、だれでも利用できるようになるため、ITだけにとどまらずビジネス全体の新しいモデルを開いていくだろう」
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