マイクロソフトがクラウドでリーダーシップを握る可能性が高まる
「オンラインメディアにはアーキテクトが必要だ」という昨日の記事の続きを書こうと思っていたのですが、クラウドに関して大きなニュースが入ってきたので今日はそのことを書きます。
大きなニュースとは、マイクロソフトがWindows Azureで提供するデータベースのサービス「SQL Data Services」(SDS)で、SQL Serverと互換性のあるSQLを提供する、という発表をしたことです。この発表は開発者向けのブログ「SQL Data Services Team Blog」で行われました。日本ではITProがニュースとして報じています。
原文からポイントを抜粋します。
we are announcing that SDS will deliver full relational database capabilities as a service.
(Windows Azureの)サービスとして、リレーショナルデータベースのフル機能を提供する、と書いています。つまり、こういうことです。
Tables?...Check
Stored Procedures?...Check
Triggers?...Check
Views?...Check
Indexes?...Check
Visual Studio Compatibility?...Check
ADO.Net Compatibility?...Check
ODBC Compatibility?...Check
訳は不要でしょう。こうしたリレーショナルデータベースのフル機能を、クラウドが持つスケーラビリティやフォールトトレラント性能はそのままで提供する、としています。少し長いですが、またポイントを抜粋します。
Things like High Availability, Fault Tolerance, Friction Free Provisioning, Pay As You Grow Scaling, Immediate Consistency. We are still delivering on these promises and have added to the mix true relational capabilities, T-SQL and compatibility with the existing developer and management tools ecosystem.
高可用性、フォールトトレラント、速やかなプロビジョニング、スケールに応じた料金など(のクラウドの特徴)はそのまま、T-SQLや従来の開発ツールなどとの互換性を保ったリレーショナル機能を提供する、としています。
マイクロソフトがWindows Azureで提供している現在のSQL Data Servicesは、名前こそSQLという単語を含んでいますが、従来のSQL Serverとの互換性はありませんでした(先日のエントリ「クラウドでチャンスをつかむために知っておきたい3つのこと」でも、そう書いたばかりでした)。
そのため、従来のビジネスアプリケーションをWindows Azureに移植する場合、全面書き直しや、ほとんど新規開発のような変更が必要でした。その理由は、Windows AzureのSQL Data Servicesのコアとなるデータベースが「キー・バリュー型」と呼ばれるアーキテクチャを採用しており、データの取り扱いも、アプリケーションから見た振る舞いも、まったくリレーショナルデータベースと異なっているためです。
この事情は、グーグルやアマゾンの提供しているクラウドでも同じで、クラウド上で提供されるデータベースサービスはすべてキー・バリュー型になっています。
クラウドでアプリケーションを展開しようとしていたソフトウェアベンダーは、高いコストを払ってキー・バリュー型のデータベースに対応する必要に迫られていたのです。
But the universal feedback we received from our TAP partners and other early adopters was the need for a relational database delivered as a service.
しかし、マイクロソフトがクラウド上にリレーショナルデータベースを従来と互換性のある形で提供してくれるなら。そして、そのデータベースがクラウドの利点を問題なく提供してくれるなら話は別です。
マイクロソフトは、Windows Azureのアプリケーション開発ツールとして、広く使われているVisual Studioと.NET Frameworkを採用していますから、従来の開発環境との互換性はほかのクラウドに比べれば非常に高いものがありました。それに加えてデータベースもSQL Serverと互換性があるとなれば、ソフトウェアベンダーがビジネスアプリケーションのプラットフォームとして、グーグル、アマゾン、マイクロソフトのどれを選択するか検討したとき、マイクロソフトのWindows Azureがリストのトップにあがることは間違いありません。
ビジネスアプリケーションのプラットフォームとしてクラウドを考えたとき、SQL Data ServicesがSQL Serverと互換になることは、マイクロソフトにとって圧倒的なアドバンテージになるといっていいでしょう。アマゾンやグーグルはこれにどう反応するのか、そちらも楽しみです。が、実際のところアマゾンもグーグルも、リレーショナルデータベースの過去の蓄積を持っていませんからチャレンジする理由はマイクロソフトほど強くありませんし、リレーショナルデータベースの分野で10年以上の実績を持つマイクロソフトと直接競合できるほどのノウハウもないと思います。想像としては、このままキー・バリュー型データベースをベースにした技術革新を進めていくのではないでしょうか。
さて。マイクロソフトはキー・バリュー型データベースをコアにしたままで、どうやってSQL Server互換を実現しようとしているのでしょうか? 再び彼らのブログからポイントを抜粋してみましょう。
How will we do it? Three letters TDS. TDS stands for Tabular Data Stream and it's the published protocol that clients use to communicate with SQL Server.
TDSというテクノロジーを用いるとのこと、そしてアプリケーションはSQL Server経由でそれを利用するらしいということが分かります。技術的な詳細は今後MSDN Dev Centerで公開されていくそうなので、それに注目することにしましょう。
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