仮想化はオンプレミスとクラウドを結びつけるキーテクノロジー
仮想化の重要な機能であるライブマイグレーションの動画を前回紹介しました。この機能は見ての通りクラスタのコールドスタンバイのように使えるのですが、それだけではなくて企業のITシステムをクラウドと連携させるのに使えるのではないか、と想像することは容易です。
仮想化がオンプレミスとクラウドを結びつける
コールドスタンバイの場合は、待機系は本番系から切り替わったときのための予備として基本的に本番系と同じハードウェアを用意しますが、もしも待機系にクラウドを使えれば待機系のハードウェアコストは不要になります。それだけでなく、物理的に離れた土地でのサーバ運用を要求されるディザスタリカバリ時の運用にも使えるでしょう。
障害対応に限らず、オンプレミスで運用しているサーバの中からそれほど重要でないサーバを、仮想化の技術でそのままクラウドへと移行できれば、運用コストが削減できるかもしれません。
いまのところ、仮想イメージをそのまま実行してくれるクラウドサービスは(少なくともメジャーなクラウドサービスには)ありませんし、ライブマイグレーションは前回書いたように移行元と移行先で共有ストレージが必要ですから、これらのアイデアがすぐに実現するわけではありません。
しかし先のことを考えれば、仮想化がオンプレミスとクラウドを結びつけるキーテクノロジだということは明らかです。
クラウドを見据えて仮想化ベンダが新たな展開へ
多くの仮想化ベンダ、ヴイエムウェアやシトリックスなどは、このトレンドに対応すべく仮想化製品をプライベートクラウドを構築するためのツールとして位置づけていますし、その先にはプライベートクラウドとパブリックなクラウドを連携するツールとして仮想化製品を位置づけることも視野に入れているはずです。
仮想化ベンダは今後、クラウドとの連携を見据えて新たな展開を見せることになるでしょう。
この点でシトリックスのXenServerは、有利な位置にいるかもしれません。アマゾンのAmazon EC2は同社のクラウドのインフラとしてXenを使用していることは知られていますが、今後はXenServerへ移行するだろうと報道されています。そうなれば、企業内でXenServerを用いて仮想化されたシステムを容易にAmazon EC2へ移行させるようなサービスが提供されるようになるかもしれません。
またXenServerは今年の2月にエンタープライズ版も無償化されました。無償化されたのはXenServerだけでなく、管理ツールのXenCenter、それにライブマイグレーションツールのXenMotionまで無償化されました。これでXenServerに関連する企業向けの仮想化ツールについては導入コストがゼロになったわけで、トップベンダーであるVMwareのシェアを猛追する体制を整えたといえます。
仮想化ベンダとしては新参組のマイクロソフトも、クラウドサービスとしてのWindows Azureと仮想化ハイパーバイザのHyper-Vの両方を揃えており、その気になればプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させるような製品とサービスを展開することが可能な立場にいます。
トップベンダであるヴイエムウェアは自社製品をプライベートクラウドを構築するための製品と位置づけ、早くも「VMware vCloud」というブランドで展開をはじめています。彼らがパブリッククラウドに対してどうアプローチするのか、見守りたいと思います。
仮想化ベンダは個別の戦略だけでなく、協力して標準仕様であるOVF(Open Virtualization Format)を作り上げています。これによって仮想マシンファイルの相互運用性を実現しようとしているのですが、もしかしたら今後クラウド側でこのOVFに対応することで、仮想化ベンダを問わずオンプレミスのシステムをクラウドへと移行させるようなサービスが、クラウドベンダーから登場するかもしれません。
仮想化とクラウドは、今後も多くの可能性を企業コンピューティングに広げてくれる非常に楽しみな組み合わせです。
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