ソーシャル的なグループウェアは「客が客を呼ぶ」ようになるのか?
IBMがSaaS第一弾として米国で7日から公開するLotusLiveの最大の特徴といえるのが、企業向けのサービスにもかかわらずmixiやFacebookのようなソーシャルネットワーク機能を組み込んだことでした。
IBM自身がプレスリリースで「Social Networking and Collaboration」と書き、報道の中にも「企業向けSNS」である、とされたこともあったようですが、昨日公開したレビュー記事に書いたように、一般のソーシャルネットワークと比べるとその機能は限定的です。
それでも僕がLotusLiveを試してこのソーシャルネットワーク機能に遭遇したときの驚きは忘れられません。実はソーシャルネットワーク機能があるという予備知識を持っておらず、コンタクトリストを作るために人名で検索したら、検索結果に知らない会社の外人の名前がぞろぞろ出てきて、僕はリアルに声を出して叫びました。
「ええ! これってあり?」
普通のグループウェアなら、アドレス帳に社外の人の名前がでてくることなどありえません。ですから、そのときLotusLiveで社外の人が検索結果に出てくるのはβ版のバグではないかと思ったのです。
しかし冷静になって調べてみれば、これがLotusLiveのソーシャル機能だったことが分かりました。
日本ならmixiやGree、米国ならFacebookやMySpaceなど、いまや多くの人が何らかのソーシャルネットワークを経験済みでしょうから、慣れてしまえばLotusLiveのユーザーはこれを違和感なく受け入れるのでしょう(僕もすぐに慣れました)。
それだけでなく、これは暗黙のうちに「協業が可能な潜在的なパートナーが社外にたくさんいるのだ」という状況をLotusLiveのユーザーすべてに与えることになります。社内に閉じている従来のグループウェアとは一線を画す機能であることは間違いありません。
例えば、自分のプロフィールに「Javaプログラムのエキスパートです」とか、自社の宣伝で「流通系のシステム開発経験が10年あります」などと書いておいて、それも検索対象にするのはどうでしょうか。あるプロジェクトで「Javaのプログラマにちょっとだけ手伝ってもらいたいなあ」と思ったら、適当な人を探して、見つけたらちょっとだけプロジェクトメンバーになってもらってToDoをアサインする。LotusLiveを通してビジネスマッチングからコラボレーションまでシームレスに行う、なんてことも十分可能だと思います。
IBMが目指したのは、グループウェアにそうしたいままでにない新たな付加価値を組み込むことなのでしょう。当然のごとく、ビジネスマッチングのところは専門のSNSとして有名なLinkedInとLotusLiveの連携をする、と発表済みです。
これが成功すれば、SNSがそうだったようにLotusLiveに「客が客を呼ぶ」状況が起こるかもしれません。しかし果たしてビジネスユーザーにソーシャルネットワーク機能が受け入れられるのでしょうか? LotusLiveの成功はこれにかかっているのかもしれません。
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