セールスフォースがサーバをサンからPCへ。コスト4分の1、性能2倍に
米国のセールスフォース・ドットコム本社が3月に行ったアナリスト向けのプレゼンテーションを公開しているのを、ブログ「セールスフォースとSaaS/クラウド」経由で知りました。今回のエントリは、このブログのエントリ「サンからデルにサーバーリプレースで75%のコスト削減 - Analyst Day 02:セールスフォースとSaaS/クラウド」を参考にさせていただいています。
セールスフォースはオラクルデータベースをサンのハードウェアで稼働させているといわれてきましたが、アナリスト向けの解説の中で、現在ではサーバをコモディティサーバ、つまりPCサーバへ移行したと説明しています。これにより、ハードウェアの調達コストは75%ダウン、つまり4分の1になり、しかもキャパシティは2倍になったそうです。
ただし、すべてのサーバがサンからPCサーバに置き換えられたのかというと、確証はありませんが違うと思います。
この3月のアナリスト向け情報では以前に、セールスフォースのサーバは1000台以下だということが明らかになって話題になりました(参考:クラウドの効率性:Salesforceの全サービスはわずか1,000台のサーバで運用されている - TechCrunch)。
このときの同社のアーキテクトのプレゼンをよく聞くと、実は1000台というのはディザスタリカバリなども含めたセールスフォースのワールドワイドすべてのサーバの台数のことです。そして前述の1000台のサーバの「ほとんど」がコモディティサーバだ、とセールスフォースのアーキテクトは表現しています。
アーキテクトの話はさらに続きがあります。驚くことに、セールスフォースのコアとなるデータベースは約10しなかく、そのデータベースに関連するインスタンス(DBMSの実体)はわずか約50台のサーバで実行されていると言っています。
これらを深読みすれば、コアとなる50台のサーバはPCサーバではなく、信頼性や性能を追求したサンのサーバである可能性は高いのではないでしょうか(そうでなければ、わざわざサンを買収してハードウェアを手に入れたオラクルの立場がありませんし)。
さて。同社のアーキテクトは、こうした少ない台数サーバや少数のデータベースで大規模なクラウドを効率よく実現できるカギが「マルチテナントだ」としています。すなわち、SaaSとして提供される1つのアプリケーションコードを利用者全員で共有し、同一のデータベースを利用しているからこそ、これほどの効率性を実現するアーキテクチャが構築できる。マルチテナントこそ、同社が競合するクラウドとの差別要因になっているのだ、と言うのです。
例えば、データベースに対する問い合わせの最適化も、同社ではOracleのうえでマルチテナントに適した独自のオプティマイゼーションを構築しており、その特許を保持しているとのこと。
同社は、マルチテナントでなければクラウドでない、というほどマルチテナントの有効性を強調しています。その主張は、この驚異的な効率性を実現できているという自負ゆえに生まれてきているのでしょう。
ところで、同社にとって3番目のデータセンターをシンガポールに建設したという発言がありました。シンガポールはマイクロソフトもデータセンターを運営しています。アジアのデータセンターはシンガポールに集まりがちなのでしょうかね。
アナリスト向けプレゼンテーションは「salesforce.com Analyst Day」のページで登録すると参照することができます。
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