Oracle互換のPostgreSQLは勢いを増すか? 動向を追ってみた
オラクルがサン・マイクロシステムズとともにMySQLを買収したことで、MySQLの将来への不透明感が増しています。例えば、NTTドコモ執行役員の西川清二情報システム部長は、先週行われたOracle OpenWorld Tokyo 2009のステージで次のような発言をしています。
同社は,オラクルのデータベース製品のヘビーユーザーだが,サンが持っていたMySQLには期待していたといい,今回のイベントの主催者であるオラクルに配慮しながらも,「第2,第3のライバルの登場を期待したい」と語った。
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その西川氏のいう「第2、第3のライバル」の筆頭にあがるのは、同じくオープンソースのリレーショナルデータベースであるPostgreSQLでしょう。いまPostgreSQLはどうなっているのか、最新の動向を追ってみました。
オラクルによるサン・マイクロシステムズ買収の発表の2日後に、IBMはPostgreSQLに関するこんなプレスリリースを発表しています。
内容はDB2の新バージョンの発表なのですが、最後にさらりと次のようなことが書いてあります。
またDB2 9.7の拡張に貢献した、IBMのビジネス・パートナーであるEnterpriseDBのCEOエド・ボヤジアン(Ed Boyajian)氏は、次のように語っています。
ここで出てくるEnterpriseDBという企業が提供している製品「Postgres Plus Advanced Server」は、PostgreSQLをベースにしたOracle互換のデータベースです。データタイプやPL/SQLでの互換性を実現することで、Oracle向けに書かれたデータベースアプリケーションがそのまま実行できることを宣伝文句にしています。
さらりと書いてあった部分は、IBMがEnterpriseDBとライセンス契約をしたことを示しています。そしてIBMはその機能をDB2の新バージョンに搭載、OracleからDB2へのマイグレーションを容易に実現するということを1つのセールスポイントにするようです。
実はIBMは2008年3月にEnterpriseDBが1000万ドル(約10億円)の資金調達をしたときに出資ししており、側面からPostgreSQLを支援していたといえるでしょう。
EnterpriseDBにはNTTも昨年10月に投資と提携をしています。ITProの記事「NTTがPostgreSQLベースのEnterpriseDBと提携,社内利用で30億円コスト削減見込む:ITpro」によると、NTTではPostgreSQLを標準のオープンソース・データベース管理システムと位置づけており、すでに数十のシステムで利用しているとのことです。
エンドユーザーがオープンソースベンダーへの投資に踏み切るほど真剣にオープンソースにコミットすることは珍しく、特にNTTのような大規模ユーザーであればなおさらのこと。これだけでもPostgreSQLはエンタープライズ市場で大きな後押しを受けていると十分にいえます。
日本でのPostgreSQLの立役者である石井達夫氏率いるSRA OSS, Inc.日本支社も、昨年10月にEnterpriseDBのマスターリセラーとなり、同時にOracleデータベースからのマイグレーションサービスを開始することを発表しました。
同じく野村総合研究所も先週、4月22日にOracleなどの商用データベースから MySQLやPostgreSQLなどのオープンソースデータベースへと、「MySQL Migration Toolkit」や「Postgres Plus Advanced Server」などを利用して移行支援を行うサービスの提供を開始すると発表しています。
PostgreSQL本体はといえば、先々週の4月15日に次期バージョン「PostgreSQL 8.4」のベータ1を公開。本体の進化も着々と行われています。
PostgreSQLの商用利用はEnterpriseDBが1つの軸になりそうです。特にOracle互換の製品としてIBMが製品に取り込んだことは、多くのユーザーから見て「安心して使える品質になった」ことを示すことになり、今後さらにエンタープライズ市場での知名度が上がっていくのではないでしょうか。
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