MySQL 5.4、オラクルのInnoDBが性能向上に貢献
オラクルがサン・マイクロソフトを買収するという発表が行われたその日、4月20日から3日間、サンタクララではMySQLのイベント「MySQL Conference & Expo」が開催されました。
イベントの基調講演では、MySQLの次期バージョンとしてMySQL 5.4が発表。より高いスケーラビリティや性能向上などを実現しています。同時に、アベイラビリティと性能を向上させたMySQL Cluster 7.0なども発表されました。
実は、このMySQLの性能向上の大部分が、MySQLのデフォルトのストレージエンジンとして採用されている、オラクルのInnoDBによるものだと基調講演で説明されています。
オラクルがInnoDBの開発元であるInnobaseを買収したのは2005年の10月。当時MySQLの支持者からは、この買収はオラクルがMySQLの進化を邪魔するためではないか、といった推測も流れていました。しかし、MySQL最新バージョンの性能向上にもオラクルは積極的に貢献していたのであれば、いままでのところその推測は外れていたと言えます。
そして、いまオラクルのサン・マイクロシステムズ買収で、MySQLの今後が心配されていますが、ここまでのオラクルの姿勢を見る限り、それほど心配しなくてもいいのかもしれません。
さて、MySQL Conferenceの基調講演のステージでは、InnoDBの紹介のためにオラクルののバイスプレジデントも登場しています。しかも退場時にはちょっとしたサプライズ演出も用意されていました。
その基調講演「State of the Dolphin」はビデオが公開されています。それを見ながら、ポイントを紹介しましょう。
講演者はサン・マイクロシステムズのVice President, MySQL & Software Infrastructure担当のKaren Padir氏。MySQLは1200万以上のユーザーがいて、1日7万回ダウンロードされており、1100を超えるパートナーがいると説明。
MySQL 5.4の発表。x86サーバでは16wayまで対応、CMTサーバ(要するにSPARC)ならば64wayまで対応するスケーラビリティの向上。サブクエリの問題などを解決。
ベンチマークで以前のバージョンと比べるとパフォーマンスが向上しているのが分かります。この画面では、コネクションが増えてもパフォーマンスの低下が小さいことを示しています。
これらの性能向上の多くはストレージエンジンであるInnoDBによるもの。ここで、オラクルのVice President Innobase ManagerのKen Jacobes氏登場。Jacobesはオラクルの社員番号18番、Dr. DBAと呼ばれ、Pedir氏の友人でもあるそうです。会場からは拍手。
InnoDBの性能向上とスケーラビリティの説明。
- Faster locking for improved scalability on multi-core platforms
- Ability to use more scalable platform memory allocators
- Dynamic control of insert buffering, adaptive hash indexing, thread concurrency
- Fast index creation: add or drop indexes without copying the data
- Data compressin: shrink tables, to significantly reduce storage and i/o
- New row format: fully off-page storage of long BLOG, TEXT, and VARCHAR columns
- User control of the delay (spin time) in sampling locks
いくつかの拡張はコミュニティ経由でグーグルなどから寄せられたとして感謝。
そしてサプライズ。オラクルには「買収したで賞」の優勝者として記念品が贈られました。そして会場に向かって「来年はあなたが勝者かもしれませんよ?」とジョーク。
続いて、MySQL Cluster 7.0の発表。インメモリデータベースで超高速、99.999%の可用性。
以前のバージョンと比べて4.3倍のスループット。
MySQL Query Analyzerの紹介。
Mark Matthews氏とGary Whizin氏の登場。昔は、データベースの問題を把握するのにOSのプロセスリストやログなどを参照したものだが、Query Analyzerでデータベース内部のクエリの様子、ボトルネックなどがビジュアルにグラフで把握できる。
単体でも16Wayまで対応し、クラスタ化やインメモリデータベースに対応するMySQLは、エンタープライズクラスのデータベースに進化したといって間違いありません。今後MySQLは、Webアプリケーションのバックエンドだけでなく、業務アプリケーションのバックエンドとしても存在感を増してくるのではないでしょうか。
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