マイクロソフトも配布を開始したjQuery、今後のバージョンでは大幅な性能向上とモバイル対応へ
JavaScriptのフレームワークには、prototype.js、Dojo toolkit、Mootools、アドビが開発したSPRY、ヤフーのYahoo User Interface Libraryなどさまざまなものがありますが、もっとも普及しているのは、モジラに所属するJohn Resig氏が開発するjQueryでしょう。
jQueryは2006年1月に最初のバージョンをリリースして以来、サイズが小さく記述がシンプル、といった特徴などから急速に普及し、多くのWebサイトやJavaScriptアプリケーションで利用されてきました。
jQueryはマイクロソフトが正式にサポートするJavaScriptフレームワークでもあります。ASP.NET AJAXがjQueryをサポートし、Visual StudioでもjQueryを標準のフレームワークとしてサポートしています。
そして、マイクロソフトはjQueryのサポートをまた一歩進めることになりました。
同社のバイスプレジデントであるScott Guthrie氏は9月15日のブログ「Announcing the Microsoft AJAX CDN」で、マイクロソフトのASP.NETチームがCDN(コンテンツデリバリネットワーク)「Microsoft Ajax CDN」を立ち上げ、jQueryとASP.NET Ajaxの配布を開始したと発表しています。
発表によると、同社は以下のURLでjQueryの配布を行うため、jQueryを利用する場合はいちいち自分のWebサイトにjQueryをダウンロードして公開する必要はなく、誰でもこのURLを利用すればいいとのこと。しかもCDNを利用しているため高速に配布されるそうです。
http://ajax.microsoft.com/ajax/jquery/jquery-1.3.2.min.js
また、Microsoft Ajax CDNは一般のASP.NETアプリケーションからも利用可能になっていると説明されており、CDNによりアプリケーションのダウンロード時間を短縮する効果を実現できるそうです。
CDNによるjQueryの配布はグーグルがAjax Libraries APIを通じて昨年から実施しています(グーグルはjQueryだけでなく、prototype.js、script.aculo.us、MooTools、Y!UIなどさまざまなフレームワークを配布しています)。
マイクロソフトがjQueryの配布を開始した背景は何でしょうか? 多くのデベロッパーがネイティブアプリケーションから徐々にJavaScriptアプリケーション、Ajaxアプリケーションへの移行を考え始めており、彼らに対して一貫した環境を自社プラットフォームで提供したいのではないか、と考えられないでしょうか。Visual Studioで開発するJavaScriptアプリケーションのjQueryライブラリがグーグルからロードされる、というのは避けたいのでしょう。
今後のバージョンでは性能向上とモバイル対応
jQueryは次期バージョンの「Thunderbird 3」や、FirefoxのアドオンをJavaScriptで書けるようにするモジラのプロジェクト「Jetpack」で採用されるなど、今後さらに普及することが予想されます(参考:jQueryの用途広がる、次期バージョンのThunderbirdにも搭載)。
そのjQueryの年次カンファレンス「2009 jQuery Conference」が、9月中旬にボストンで開催されました。
カンファレンスでは、jQuery開発者のResig氏によるプレゼンテーションが行われ、その資料がResig氏のブログで公開されています。
現在jQueryのバージョンは1.3.2ですが、資料によると次バージョンの1.3.3では全体にオーバーホールが行われ大幅な性能向上を実現。さらに1.4ではiPhone、Palm Pre、Android、Fennecなどモバイル環境での最適化を進めるとともに、jQuery UIとしていままで別だったユーザーインターフェイスまわりのいくつかの機能をjQuery本体に組み込むことが明らかになっています。
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