Javaのオープンソース実装にくすぶる懸念。オラクルはこの問題を解決するのか?
サン・マイクロシステムズが開発した「Java」は、2007年にオープンソースとなり、JDK(Java Development Kit)のソースコードがGPLの下で公開されました。そしてそれを基にオープンソースによるJavaの実装である「OpenJDK」が始まりました。
OpenJDK開始後も、サンは引き続き同社製の(いわゆる純正)JDKをリリースしていますが、OpenJDKはそれにひけをとらない品質のJDKに仕上がっていると評価されています(両者はおおむね同一のもの、ともいわれているようです)。
OpenJDKによってJavaのソースコードはオープンソースになりましたが、まだ懸念が指摘されています。それはサン・マイクロシステムズから提供されている、Javaの互換性を確認するTest Compatibility Kit(TCK、互換試験キット)にライセンス上の制限があるという点です。
マイコミジャーナルの2009年4月の記事が、この懸念について以下のように説明しています。
この条項があるために互換試験キットを使ったソースコードに同条項を追加する必要があり、この条項はOSSライセンスとは相容れない内容になっているためOSSとしては公開できないというわけだ。
「Java 7はいらない? | マイコミジャーナル」から引用
Javaをオープンソースで活用したい人たちの長年にわたるこの懸念を、サン・マイクロシステムズを買収した後のオラクルが解消してくれることを期待している、と話すのは、先日ヴイエムウェアに買収されることが決定したSpringSourceのCEOであり、著名なJavaデベロッパーでもあるRod Johnson氏です。
Johnson氏は、The Registerの記事「Oracle should relax Sun's Java Community control grip」で、
If they don't do that, they are throwing away an opportunity.
と、オラクルがこの変化のタイミングを逃がしてほしくないとコメントしています。
Apacheが過去に抗議文を公開したのだが
TCKの制限条項にはApache Software Foundationも以前から反発を表明していました。Apacheが独自でJavaのオープンソース実装を進めているApache Harmony の進展を妨げている、といったことが関係しているためです。
2007年4月に、Apache Software Foundationがサン・マイクロシステムズに対する抗議文を公開したことを、Computerworld.jpの記事「アパッチ、Java互換性検証キットのライセンスを巡りサンに抗議」が報じています。
アパッチ・ソフトウェア・ファウンデーション(ASF)は4月10日、米国サン・マイクロシステムズが提供しているJava技術互換性検証キット「Java Compatibility Kit(JCK)」のライセンスを巡り、抗議する文書をオンライン上に公開した。
ASFは、「サンが提供しているJCKのライセンスは知的財産権に制約を設けるものであり、到底受け入れられない」としている。
その後2007年8月には下記のITproの記事にあるように、TCKがOpenJDKに対して新しいライセンスで提供されたようなのですが、これでも懸念は完全に払拭されていなかったようです(このあたりのライセンス事情についてもし事情をご存じの方がいましたら、ぜひ情報をお寄せください)。
果たして、Javaの新しいオーナーとなるオラクルはこの懸念を払拭してくれるでしょうか? SpringSourceのRod Johnson氏は、前述のThe Registerの記事中で以下のようにコメントしています。
Oracle doesn't get a huge amount of trust in the open-source community
オラクルは、オープンソースコミュニティからそれほど信頼されているわけではない
そして心配しているのだと本音を明かしています。
Oracle they don't have an open-source track record so there's more concern
オラクルは、これまでそれほど信頼を積み上げてきてはいない。だから心配しているところだ
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