ウォーターフォールからアジャイルに向けて動き出す米国防総省のIT調達
現在のような形のウォーターフォールモデルがソフトウェアの開発手法として広まったのは、米国防総省が1980年代に定めた調達標準としてウォーターフォールモデルを(それも各フェーズにフィードバックのない一方通行的なウォーターフォールモデルを)採用したためだといわれています。
その米国防総省がようやく、アジャイル開発手法を本格的に取り入れようとしていると、米Excella Consultingに所属し、Project Management Institute(PMI)などの活動を行っているJesse Fewell氏がブログのエントリ「Defense Procurement Goes Agile」で伝え、アジャイルに興味のある人たちのあいだで話題になっています。
Fewell氏のエントリは、米国防総省のCIOオフィスに勤務するDon Johnson氏が行ったプレゼンテーションが基になっています。そのJohnson氏いわく、国防総省内部では現在の調達手法では限界があるということがコンセンサスとなりつつあるとのこと。
2008年には連邦議会で、現在の調達方法に対する懸念から調査がはじまり、その調査結果として反復的で漸進的なアプローチを推奨すべきという結論になったそうです。来年度の国防支出法案として、
"designate up to 10 IT programs annually to be included in a demonstration of an alternate acquisition process for rapidly acquiring IT capabilities" (2010 NDAA, Section 804).
迅速なITシステムの獲得のために、最大で10のプログラムについて新たなプロセス(つまりアジャイルプロセスのこと)を採用した案件をデモンストレーションとして採用する。
という内容を含むことがゲーツ国防長官によって承認される見通しになっています( Fewell氏のブログから引用)。
しかし書籍「初めてのアジャイル開発]を読むと、1980年代からウォーターフォールでプロジェクトの失敗を経験してきた米国防総省は問題を認識しており、これまで何度かアジャイルによる調達標準の策定やアジャイルによるプロジェクト運営に挑戦してきたことが解説されています。つまり、恐らく今回のような取り組みは初めてではないのでしょう。
Fewell氏はこのエントリの最後を「There is certainly more to come.」と期待を込めて結んでいます。米国防総省の取り組みは今回成功するでしょうか?
アジャイルについて最初の一冊を選ぶならこの本。ソフトウェア開発は何であり、なぜアジャイル開発が有効であるかが語られる前半。後半では代表的な手法としてXP、スクラム、RUP/UPなどが解説される
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