縮小する国内IT市場。ここを抜けると来年には成長が待っているはずだが......
7月に入って、2008年、2009年の企業向けパッケージソフトウェア市場が苦しい状況にある、という調査会社の報告が相次いで発表されています。
- アナリストの視点:システム構築の砦「パッケージソフト」にもマイナス成長の余波 (1/2) - ITmedia エンタープライズ
- 2009年度企業・団体向けパッケージソフトの国内市場はマイナス成長に |マイコミジャーナル
- 【ミック研調査】国内基幹業務パッケージ市場、2008年度はマイナス成長に転じるも2009年度以降は復調へ(2009/07/16) - CIO Online
どの調査でも、サブプライムローン問題が深刻化した2008年の下半期から企業のIT投資が絞られた影響で、2008年や2009年のパッケージソフトウェア市場の成長率はマイナスかほぼ横這いという数値が示されています。
ミック経済研究所の調査では、2008年度の国内基幹業務パッケージソフトウェア市場が対前年比でマイナス0.3%。市場の9割以上を占めるERPパッケージの出荷低迷が大きく影響したと報じられています。しかし2009年度にはプラス1.5%とややプラス成長との予測です。
一方、富士キメラ総研の調査では、2009年度に対前年比マイナス0.4%とわずかながら微減。2010年度にプラス6%程度の成長と予測しています。富士キメラ総研では、消費需要の低迷に加え、急速な円高によって業績が悪化している製造業のIT投資抑制が低迷の主要因だと分析しているようです。
国内のIT市場全体が今年はマイナスに
パッケージソフトウェア市場だけでなく、2009年の国内のIT市場規模全体が前年比でマイナス3.8%、と予想しているIDC Japanの調査に関する記事も4月に報じられていました。
予想の中でもっとも減少しているのはハードウェア市場で、前年比マイナス11%。とりわけサーバとPCの売上げが大幅に減少するとIDC Japanは予想しています。
パッケージソフトウェア市場やハードウェア市場の低迷は、当然ながらパッケージのカスタマイズやハードウェアとソフトウェアを組み合わせてシステム納入しているSIerなど、IT全体にとっても深刻な事態です。
でも伸びている分野もある
こうした中で伸びている分野はどこなのでしょうか? IDC Japanの調査では、低成長だった2008年にあってもっとも成長したのがCRMだったと報告されています。
調査によると「2008年にCRMソリューション市場が前年比4.8%増と、もっとも高い成長率を示した」そうです。また、2008年から20013年までの5年間で見ると、CRM市場の毎年の成長率は平均で3.8%と予想されており、同様にERP市場の毎年の平均成長率が3.5%、SCMが3.2%などと予想されています。
日経マーケットアクセスの統計でも同様の傾向が出ています。下記の日経マーケットアクセスの2009年6月の調査では、IT投資が軒並み前年より縮小される中で、「CRM・顧客関連」は比較的縮小率の小さい分野となっています。売上げに直接関わるシステム分野への投資は守ったということなのでしょう。
- 第1四半期予算は全分野が前年比9~33%減,生産管理/SCM/ハード/ソフト購入の削減率が突出:ITpro
- 2009年度予算前年度比,3月調査よりSCMとCRMの減少率が小幅に,インフラ系は減少率が拡大:ITpro
記事によると、縮小が大きい分野は「仮想化基盤,OSの購入」となっています。サーバやPCといったハードウェア市場が前述のように大きくしぼんでいることと合わせて考えると、業務に直結しない不要不急のインフラ整備がもっとも後回しにされている、といった様子が浮かんできそうです。
来年にはプラス成長が期待できる
とはいえ国内IT市場が縮小するのは今年まで。企業向けのアプリケーション市場は再び成長へ向かうというのが、大方の予想のようです。
- 国内エンタープライズアプリ市場、年3%成長へ--IDC Japan予測:ニュース - CNET Japan
- 【ミック研調査】国内基幹業務パッケージ市場、2008年度はマイナス成長に転じるも2009年度以降は復調へ(2009/07/16) - CIO Online
しかその頃には、企業がパッケージソフトを購入して自社に合わせてカスタマイズし、オンプレミスで稼働させるという、現在の主流となっているIT利用の形はずいぶん違うものになっているかもしれません。
パッケージではなくSaaSを利用し、それをカスタマイズしたりマッシュアップして利用する、さらにオンプレミスではなくクラウドをIT基盤として利用したい、といった企業のニーズは増大してきていますし、この経済状況でコストに敏感になった企業は、SaaSやクラウドのような低コストのソリューションに魅力を感じるようになってきていることは、誰の目にも明らかです。
そうした顧客のニーズに応えられるようなベンダやSIerに変われるかどうか。それが、再び市場が成長しはじめたときに、それをエンジョイできるかどうかの分かれ目になるのではないでしょうか。