IBMがいま注目している5つのテクノロジー~The Global Technology Outlook 2009
月曜日の夜にIBMのdeveloperWorksが主催するブロガーズミーティングに参加してきました。30名ほどのブロガーが集まったこのイベントの目玉は、IBM基礎研究所が発表する「The Global Technology Outlook 2009」(以下GTO)の発表です。
GTOは、IBMが将来の技術動向を予測するために毎年行っている調査で、今年の研究結果は2月にまとまったばかり。社外には本邦初公開だそうで、しかも発表はIBM東京基礎研究所長の丸山宏氏が行いました。
丸山氏曰く、このGTOは、いま起きつつあるさまざまなテクノロジーを幅広くカバーした中から、今年はこれが重要だというものを5つほど選ぶとのこと。選ぶ基準としては、テクノロジーそのものよりも、どの問題を解くテクノロジーが重要かという点にフォーカスするそうです。
30分ほどの駆け足での発表だったこともあって、ここではポイントだけを紹介します。
1つ目の注目テクノロジーは「デジタルエコノミー」
金融危機を引き起こした複雑な金融商品の透明度をいかに高めるか、あるいは新興国で起きている携帯電話による少額決済のようなトランザクションをいかに低コストで実現するか、炭素の排出権のようなマネーと同等の価値を持ちつつある事象をいかに正確にすばやく決済するか、といった問題を解決するテクノロジーとしてのデジタルエコノミーが重要になるとのこと。
2つ目の注目テクノロジーは「サービスの質(の向上)」
サービスの質は、モノの側面とサービスの側面の両方が関わっている。例えば、サーバでいえばハードウェアの質と保守の質の両方が関係しており、これをフロントステージとバックステージに分けて考えることができる。この2つのステージの相互作用をうまく行うためのテクノロジーに、サービスの質を向上させる重要なポイントがあるとのこと。
3つ目の注目テクノロジーは「クラウド」
クラウド・コンピューティングよりも広い意味でクラウドを捕らえた場合、下のレイヤから順に、インフラサービス、プラットフォームサービス、アプリサービス、ビジネスサービス、ピープルサービスとさまざまなレイヤがある。クラウドの市場規模は特にアプリケーション、ビジネス、ピープルのレイヤで大きくなっていくことが予想される。ピープルサービスレイヤのクラウドの例としてコンタクトセンターを想定すると、知識活用技術によりクラウドの質や効率の向上を図れるし、プラットフォームレイヤでは、クラウド管理サービスといったものでクラウドの質の向上を図れるかもしれない。こうしたさまざまなレイヤでのクラウドを向上させるテクノロジーが重要になるとのこと。
4つ目の注目テクノロジーは「セキュリティ」
これまでのセキュリティでは、境界を作ってその内側を守る仕組みだった。しかしいまは、複数の企業が連携して1つのエコシステムを作るなど境界の内と外があいまいになっている。そこで、境界ベースではなく、プラットフォーム、データセンター、ミドルウェア、SOA、コラボレーション、コミュニティといったさまざまなレイヤごとに細粒度のセキュリティシステムがでてくるのではないか。
5つ目の注目テクノロジーは「(ビジネスに)変革をもたらすハイブリッドシステム」
ムーアの法則はいろんな場面でまだ有効であり、業界に変革をもたらすにはムーアの法則より早くITが進化しなくてはいけない。そのためには、目的ごとに最適なシステムをハイブリッドで構成する必要がある。例えばロスアラモス研究所のスーパーコンピュータは、CellプロセッサをAMD Opteronでコントロールするシステムとなった。また、大量のデータが生成されネットワークで伝播してくる時代には、これをほぼリアルタイムで処理する必要があり、こうした処理を実現するハイブリッドなシステムの実現が重要なテクノロジーになるとのこと。
自分のメモから書き起こしたので、多少の勘違いがあるかもしれません。お気づきの点あればコメント欄などでご指摘いただけると幸いです。
全体に感じたのは、問題を解決する以上に、すでにあるものの質を高めるためのテクノロジーの重要度が高まっているなあということです。
ブロガーズミーティングの第二部では、ブロガー同士でディスカッションをしました。そこでも興味深い内容がいくつかあったのですが、それはまた別のエントリで書きたいと思います。
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