クラウドで先頭を走るセールスフォースが「過去最大のブレークスルー」を発表。Dreamforce 2009
クラウド市場を先駆者として切り開き、先頭を走り続けている企業が米セールスフォース・ドットコムです。そのセールスフォース・ドットコムが先週、同社のプライベートイベント「Dreamforce 2009」を開催。「これまでで最も革新的」(同社会長兼CEO マーク・ベニオフ氏)と断言する新サービス「Salesforce Chatter」を発表しました。
Salesforce Chatterとは、簡単にいえば企業内のツイッターです。企業内でつぶやきを共有するツイッター的な機能に加え、つぶやきへのファイル添付機能、従業員リスト機能などが含まれ、業務に必要な情報や社員間の情報共有を実現するエンタープライズ・コラボレーション基盤であると紹介されました。
こうした同社の新基軸が発表された、11月18日(日本時間11月19日)に行われたDreamforce 2009のキーノートスピーチの内容を、公開されているストリーミングを基にダイジェストで紹介しましょう。
Dreamforce 2009のキーノートスピーチ
キーノートスピーチのホストを務めるのは、会長兼CEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏。ベニオフ氏は同社が売上げと顧客数の両面で順調に成長していることをグラフで誇らしげに示す。「7万社近くの企業が顧客となっています」
Service Cloud 2はFacebookともツイッターとも連係
そしてSalesforceの上でSaaSとして提供されているアプリケーションの最新バージョンを紹介。まずはカスタマサービス業務のためのアプリケーション「Service Cloud 2」
Service Cloud 2は18カ月前から1つの課題を解決するために開発してきた。それは、カスタマサービスの情報は、グーグルやFacebook、Twitterやブログなどのインターネットに蓄積されている情報と分断されていることだ。
私は先日、ブラックベリーとヘッドセットを連係させようとしたけれどやり方が分からず、それでグーグルで検索して6つのサイトがヒットした。中にはビデオで紹介してくれているサイトまであった。
カスタマサービスはもっとグーグルやツイッターやFacebookなどと連係するべきだ。Service Cloud 2はそれを実現するアプリケーションである。
Service Cloud 2のデモを紹介するために登場したのは、同社シニアバイスプレジデント プロダクトマーケティングのクレイグ・センスラッド(Kraig Swensrud)氏。
Service Cloud 2はSalesforceの画面から、問い合わせしてきた顧客の情報や、質問と回答を蓄積したナレッジベースなどを提供するアプリケーション。ナレッジベースには画像や動画なども格納でき、自社のビジネスに合わせてカスタマイズ可能。
ではカスタマサービスに問い合わせてこない顧客に対してはどうするか? Service Cloud 2なら、ナレッジベースの内容をパブリックなWebサイトとして公開できる。グーグルの検索にもひっかかかる。顧客はセルフサービスで問題を解決することができるのだ。
しかし問い合わせに対する回答が、社内のナレッジベースにはないかもしれない。社外の誰かが知っているかもしれない。そこでService Cloud 2では「Salesforce Answers」という機能が開発された。これはSalesforceの上ではなく、Facebookに実装したアプリケーションだ。
例えばこれは、Facebookにあるデルのファンクラブページ。ここに「Answers」というタブがある。
このタブの中では、ユーザー同士が自由に質問と回答を寄せ合える。そして参考になった回答には投票が集まるようになっている。
もちろんService Cloud 2のナレッジベースから、FacebookにあるSalesforce Answersの内容はすべて参照できる。そこから1クリックでナレッジベースへ取り込み、そしてパブリックなWebサイトへ表示し、グーグルにインデックスしてもらうことができる(FacebookはmixiのようなSNSであるため、その中にある情報はグーグルの検索対象とはならない)。
Service Cloud 2のツイッター連係
今年のホットな話題はツイッターだった。カスタマサービスはツイッターをどうやってサービスに生かすべきだろうか?
そこですでに提供しているのがSalesforce for Twitterだ。顧客はデルのカスタマサービス(@ask_dell)宛にツイッターで質問をつぶやけばいい。
Service Cloud 2の画面にはそのつぶやきが自動的に表示されるようになっており、カスタマサービスはその質問に対してナレッジベースを呼び出し回答を検索し、すぐにツイッター経由で返答することができるようになっている(Salesforce for Twitterについては、記事「Twitterは企業と顧客をダイレクトに結ぶツールとなる、SalesforceがTwitterに対応」を参照)。
Sales Cloud 2では見積もり生成機能や新UIなど
続いて、同社のフラグシップサービスである営業支援アプリケーション「Sales Cloud 2」の紹介。
Salesforce for Outlook 2ではSalesforce上に設定したスケジュールがOutlookにボタン1つで送り込める新機能が追加。
見積もりを自動生成してくれる機能も入る。製品と値段とディスカウントレートなどを入れると、見積もりがPDFで生成される。あとは電子メールなどで送信すればいい。あるいはURLを送信することで、そのURLのWebページには見積もり、製品ブローシャーなどを表示させることができ、ファイル添付の必要がなくなる。
セールスフォースは業務アプリケーションをアマゾンドットコムのように簡単に使えることを目指してきた。さらにユーザーインターフェイスを分かりやすく作り直しているところで、来年登場予定だ。
Salesforce Chatterの発表!
再びベニオフ氏登場。次に紹介する新サービスの期待をあおる。
Facebookやツイッターは本当に業界にとってブレイクスルーとなった。一方で、企業ではコラボレーションの分断が起きている。SharePointやLotusNotesのようなコンテンツ、SalesforceやOracleやSAPのような業務アプリケーション、Outlookやインスタントメッセージングのようなコミュニケーション、この3つのあいだには連係がない。
1996年、当時オラクルにいた私がアマゾンドットコムを初めて使ったとき、業務アプリケーションはなぜこのようにならないのだろうと思った(そしてセールスフォース・ドットコムを起業した)。そしていま、Facebookやツイッターを使ったとき、エンタープライズコラボレーションはこのようになるべきだと確信した。
25年前に開発されたロータスノーツ、15年前に開発されたシェアポイントではなく、新しいブレイクスルーが訪れるべきだ。そしてこれはセールスフォースにとって最大のブレイクスルーだ。それを紹介する。「Salesforce Chatter」
これはFacebookやツイッターが起こしたマジックを、エンタープライズに持ち込むものだ。コンテンツ、アプリケーション、そしてコミュニケーションを、リアルタイムなSNSのような形でエンタープライズに持ち込むことができる。
ここでセールスフォース・ドットコムの共同創立者で同社エグゼクティブ・バイスプレジデントのパーカー・ハリス(Parker Harris)氏が登場。Salesforce Chatterのデモを行う。
これがSalesforce Chatterの画面。タイムラインで従業員が会話をするだけではなく、ツイッターやフェイスブックの会話をフィードして表示することもできるし、人の会話だけでなくボットからの会話としてアプリケーションからの報告を表示させることができる。
ここではSAPから「サプライチェーンオーダーが失敗しました」、オラクルから「Invoice # 4392が処理されました」といった報告が行われている。
データオブジェクトもつぶやく。例えば顧客情報が変更されるとそれが会話として表示され、営業のきっかけになるかもしれない。
つぶやきにプレゼンテーション資料のようなファイルを添付して公開することもできる。シェアポイントで共有するよりずっと簡単だ。
プロフィールページもあり、ここで自分のプロフィールを登録できる。右側に並んでいるフォロワーアイコンで自分自身が会社内でどのような人にフォローされているのかも分かる。
企業内の従業員ディレクトリもあり、誰がどの部署にいるのか、どんなプロフィールなのかを確認することができる。
そしてセールスフォース・ドットコムが提供するアプリケーションは、この「Salesforce Chatter」をコラボレーション基盤として統合する。
最後にツイッターの取締役であるジェイソン・ゴールドマン(Jason Goldman)氏が登場。いまツイッターで何が起きているのか? 人々はもっとつぶやきのような情報をオンラインで共有していく方向へ進んでいくだろう。それをリアルタイムでどうやって簡単に、よりよい方向で実現できるかを考えているところだ。
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