クラウドストレージの標準APIがストレージ団体「SNIA」から提案される
「クラウドストレージ」とはクラウドで提供されるストレージサービスのことで、DaaS(Data Storage as a Serivce)と呼ばれることもあります。このクラウドストレージの操作と管理の標準的なAPIを、ストレージ業界の団体「SNIA(Storage Networking Industory Association」を母体とした組織「SNIA Cloud Storage Initiative」が提唱しています。
SNIA Cloud Storage Initiativeは10月12日に発足したばかりで、EMC、ネットアップ、HP、サン・マイクロシステムズ、シマンテックなどが参加。このSNIA Cloud Storage Initiativeが提唱するクラウドストレージのAPIが「Cloud Data Management Interface(CDMI)(PDF)」と呼ばれるものです。
CDMIはRESTをベースにしたAPIで、ストレージに対する作成、読み取り、書き込み、更新、削除の基本操作ができるほか、アカウントと権限の設定などの管理用APIも用意されます。
SNIA Cloud Storage Initiativeによると、このクラウドストレージ用APIは、個々のクラウドストレージサービスが提供するネイティブなAPIを置き換えるというよりも、それと並行して提供されるものと考えているようです。
また、SNIA Cloud Storage Initiativeから公開されたドキュメント「Cloud Storage Use Cases(pdf)」もなかなか興味深い内容です。これはタイトル通りクラウドストレージがどのように利用されるかというユースケースを思いつく限り並べたものです。主なユースケースをピックアップしてみると以下のようになります。
- YouTubeやFlickrのようなメディアストリーミング、メディアストレージ
- SNS、Blogのような特定用途のコンテンツの保存
- クラウド経由で利用する一般用途向けストレージ(Cloud Driveと呼ぶ)
- PCやサーバ、NASなどローカルデバイスのバックアップ用クラウドストレージ
- 長期アーカイブサービス
- クラウド間バックアップ
つい先日、スマートフォン向けのクラウドストレージサービスがデータを失うという事故があったばかりですが(参考:ネット史上最大の惨事のひとつ発生―Microsoft Danger、T-MobileのスマートフォンSidekickのユーザーデータのすべてを失う - TechCrunch)、クラウドストレージはクラウドの得意分野であり、利用者にとっても非常に便利なサービスです。しかし半面、すべてをクラウドに預けると万が一事故があったときには前述のように利用者にとって大惨事です。このリスクをヘッジするためには、利用者側でバックアップをローカルや別のクラウドに持っておくなどの柔軟な操作が(実際にユーザーが行わないとしても)可能になっていることが望まれます。
それをどのクラウドでも共通のAPIで実現可能にする、という標準的なクラウドストレージAPIの提供は望ましいことといえるでしょう。
一方で、ストレージベンダの集まりであるSNIAが本当にこうしたAPIの普及に影響力を持てるのか、という点については未知数です。パブリッククラウドでは、Amazon、Google、Microsoftなどのメジャーベンダは恐らくサーバ内蔵のハードディスクを用いていると思われ、ストレージベンダが影響力を行使できるような相手とは思えません。
一方でプライベートクラウドについては、VMwareなど仮想化ベンダが主役となっていますが、仮想化システムの利点を引き出すためにSAN構成にしたストレージが重要な役割を(特にライブマイグレーションで)担っており、一定の影響力があるのかもしれません。
いまはさまざまなクラウドAPIが提唱、提供されている時期であり、今後もいろんな組織から似たようなAPIの提供は続くと予想されます。その中でどれが標準的な地位を占めるのか、それが分かるのはまだ何年も先のように思います。
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