天の川銀河の謎をクラウドで解く。欧州宇宙機関がAmazon EC2で実現予定
欧州宇宙機関(ESA)では、私たちの住む天の川銀河に存在する10億個の星の位置を正確に測定し、立体的な天の川銀河の地図を作成するという「Gaiga」計画が進行中です(10億個というのは天の川銀河の全恒星の1%程度だそうです)。
計画では、2011年に打ち上げ予定の衛星Gaiaがラグランジュポイント2で観測を行い、それを地上で分析することで、恒星の位置だけでなく運動の方向や組成といった分析まで行うとのこと。2017年まで継続的に観測を続けたのち、2019年には天の川銀河の立体地図が完成する予定です(ラグランジュ2といえば、ガンダムファンにとってはジオン公国となるサイド3の建設予定空間ですね)。
衛星からは2台の高性能カメラで捕らえられた写真が地上へ転送されます。地上へのダウンリンクはエンコードや地上の天気に依存しますが、おおむね3~8Mb/sで、1日あたり約30GBにおよぶ画像データが転送されてくるとのこと。
クラウドによって星の位置を計算する
問題は、毎日およそ30GBずつ送られてくる衛星からの画像を基に、10億もの星の位置を正確に計算するためのデータセンターをどう用意するかです。
欧州宇宙機関はAGIS(Astrometric Global Interacitive Solution)という分析システムを運用中ですが、アマゾンのブログ「Amazon Web Services」のエントリ「Scaling to the Stars」によると、Gaia計画によって発生する膨大なデータの保存と計算のために、AGISが、アマゾンのクラウド上に実装されたとのことです。
欧州宇宙機関と共同でシステムの構築と運用を行っている「The Server Labs」が公開しているプレゼンテーション資料(記事下参照)によると、クラウドでAGISが移植できるか? スケーラビリティに問題はないか? などを検証したところ、スケーラビリティなどいくつかの問題をクリアして稼働させることができたとのこと。
しかもトータルコストは見積もりで34万3599ユーロ(約4億6000万円)。一方で、計算機を自前で調達すると想定した場合、見積もりは7万2000ユーロ(約9億6200万円)で、しかもこれは計算機のみの費用で、電気代とストレージ費用は含まれていません。
同社のプレゼンテーションでは、アマゾンのクラウドでの性能、コストともに問題ないと結論づけています。
まだ欧州宇宙機関がAmazon EC2を正式に採用する、というアナウンスは行われていないようですが、2011年の衛星打ち上げとともに、クラウドの中に銀河の地図が少しずつ刻まれていくことになるのかもしれません。