Amazonクラウド、大規模データのエクスポートに対応。これが業界標準になるか?
クラウド上に保存した大規模なデータを、ほかのクラウドへ移動したいときにどうするか? クラウドのインターオペラビリティは利用者にとって大事な問題ですが、現在のところ標準的な転送方法が存在しないどころか、大規模なデータのエクスポート手段さえ提供していないベンダも存在します。
こうしたクラウド間のインターオペラビリティを実現しようとOpen Cloud Manifestoなどの団体が標準化を推し進めようとしていますが、まだクラウドベンダ全体のコンセンサスがとれているとはいえず、標準化にはほど遠い状況です。
そんな中Amazon Web Servicesは、いままでインポートにしか対応していなかった物理的なハードディスクによるデータの転送サービスに関して、エクスポートにも対応するとブログで発表しました。
要するに、アマゾンにハードディスクを送付すると、クラウドに保存された大量のデータをハードディスクにコピーして送り返してくれる、というサービスです。
5月に同社がインポートに対応したサービスを発表したときに、数カ月以内にエクスポートにも対応すると予告されていました。それが今月になって実現したというわけです。
回線を通じて転送するよりハードディスクにコピーする方が早い
AWS Import/Exportと呼ばれるこのサービスは現在β版として提供されており、1ハードディスクあたり80ドル、ハードディスクへのコピーもしくはハードディスクからのコピーにかかる1時間あたり2.49ドルかかります。
利用するにあたっては、事前にブロックサイズやハードディスクの容量、コマンドなどを指定したmanifest fileをアマゾンにeメールで送付し、返送してくるジョブIDを受け取ったうえで、アマゾンにハードディスクを送付します。するとアマゾンが指定された内容のデータをハードディスクにコピーし、返送してくれます。
対応するデバイスは、USB2.0もしくはeSATAのインターフェイスを備え、NTFS、ext2/3、FAT32でフォーマットされたものです。
アマゾンでは、例えば10Mbpsの速度でインターネットと接続している場合、600GB以上のデータをやりとりする場合にはこのサービスを利用した方がよい、とアドバイスしています。
いまのところこのサービスは米国内のみ利用可能で、数カ月以内にヨーロッパでも開始される予定とのこと。残念ながら日本国内からの利用はできないようです。
この方法が業界標準になる?
こうした数百GBから数TBにのぼるような大規模なデータの移動は頻繁にあるわけではありませんが、クラウドベンダによるロックインを嫌う利用者の立場としては、このようなデータ移行のためのサービスを提供するベンダを、そうでないベンダよりも高い優先度で選択することはあり得るでしょう。
そして現在のところ、こうした大規模データのエクスポートに対して効率的なサービスを提供している主要なクラウドベンダはアマゾンだけです。
今後しばらくインターネット回線全体の帯域幅が急激には向上しないと予想した場合、AWS Import/Exportで実現しているハードディスクによるデータの受け渡し方法、manifest fileも含む全体的な方法が、もしかしたらクラウド間の大規模データ転送における事実上の業界標準になる、といったことが起こるかもしれません。
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