パッケージソフトウェア市場でいかに生き残るか? David Iに聞いた
クラウドの台頭やオープンソースが企業向けのシステムでも導入が進むなど、従来のパッケージソフトウェアビジネスに対する大きな変化が訪れているように見えます。この時代に、ソフトウェアベンダはどう生き残り戦略を考えているのでしょうか。
ボーランド時代からDelphiやJBuilder、Interbaseなどの開発者向けのソフトウェア製品を展開するエンバカデロ。同社の顔として長年にわたりエバンジェリズム活動を続け、パッケージソフトウェア市場に長い経験を持つデビッド・インターシモーネ(David Intersimone)氏、通称David I氏に、パッケージソフトウェア市場の変化と同社の戦略について聞きました。
―― パッケージソフトウェアビジネスは大きく変化しつつあるように思う。どう見ているか?
たしかに店頭でソフトウェアのパッケージを買うことは減り、最近では開発ツールの多くがインターネット経由で入手、あるいは購入されている。この方法なら、簡単に入手できるだけでなく、アップデートも自動的に行われて便利だ。
ソフトウェアの入手経路だけではなく、ソフトウェアそのものがネット上で動作するという新しい変化も起きている。スプレッドシートやスケジューラ、それに画像編集までネットでできるようになった。
これはソフトウェアの導入や利用が複雑になってしまったためだ。ダウンロードしてインストールするだけでも時間がかかるし、WindowsのようなOSを利用しているとデスクトップの管理も手間がかかる。もっとアプリケーションを簡単に使えるようにする、ということがこのトレンドを形成しているのだ。
また、大きな企業では、セキュリティ上の理由で社員が自分のPCにソフトウェアを簡単にインストールできないようにもなっている。パッケージのまま社員に渡してしまうと、どのPCにインストールしたかも追跡できないし、ライセンスの管理もできない。
つまりパッケージソフトウェアは形態として電子的なものになっていくことは明らかだ。
―― パッケージソフトウェアのビジネスが難しくなっている状況に対して、エンバカデロはどう対応しようとしているのか?
エンバカデロの提供しているAll-Accessという機能では、アプリケーションをサーバに入れておいてPCから起動できるし、USBメモリに入れておいて、そこからも起動できる。PCへのインストールは不要で起動し、終了すればそのマシンからきれいに消え去る。
例えばコンサルタントなら、USBメモリにデータベースの最適化ツールであるDB Optimizerや、モデリングツールER/Studioなどを入れて客先のPCで利用することもできるだろう。
また、ライセンスサーバ機能も提供しているため、社内のライセンス管理も可能だし、しかも社内のあるプロジェクトで利用したツールは、そのプロジェクトが終了したら別のプロジェクトで使うといった柔軟なライセンスの活用も容易にできる。
つまりわれわれの製品は既存のパッケージソフトウェアの運用が抱えている、面倒なインストール、ライセンスマネジメント、コスト管理の効率化などの問題を解決している。
―― パッケージという形態の問題だけでなく、例えばオープンソースのようなソフトウェアとの競合についてはどう考えているか?
マイクロソフトのOfficeとOpenOffice.orgなど、アプリケーションの領域ではそうしたことが起きているかもしれない。しかし、ビジュアルな開発ツールや複雑なデータベースモデリングツールなどの領域では、例えばDelphiやER/Studioなどはオープンソースの統合開発ツールのEclipseなどとはそれほど競合していないと思っている。
もしかしたらこの先5年、10年すれば状況は変わるのかもしれないが。
―― これからパッケージソフトウェアのビジネスに参入したいと考えているプログラマたちに、アドバイスがあるとすれば?
もしも何かアイデアがあるのなら、やはりクラウドに対応したものがいいのではないだろうか。これからは多くのデータがクラウドに集まるだろう。
最初から、大きなソフトウェアを狙ってはいけない。小さくて使いやすいものを素早く作って公開し、フィードバックを得るといいだろう。