クラウドはどう使われるのか? 8種類のユースケースから得られた結論とは
「Cloud Computing Use Cases Whitepaper」という文書が公開されています。クラウドを企業やエンドユーザーが利用する場合、どのような利用形態や構成が考えられるのか、といったユースケースを包括的にまとめたドキュメントです。
作成したのはCloud Computing Use Case Discussion Groupで、その中心メンバーは、あの「Open Cloud Manifesto」のメンバー。とりまとめ役をIBMのDoug Tidwell氏が行っています。議論は、グーグルグループに設けられた「Cloud Computing Use Cases | Google Groups」で行われていました。
ドキュメントはクリエイティブコモンズの「表示-継承」でライセンスされており、商用利用や二次的著作物の作成などが可能になっています(そこで、このエントリにも同様のライセンスを設定しました)。
8種類のユースケース
ドキュメントではまず、クラウドのデリバリモデル3種類を定義しています。以下の紹介はドキュメントの内容を簡略化しています。詳細はぜひドキュメントをあたってみてください。
- Software as a Service(SaaS)
利用者がアプリケーションを利用する。 - Platform as a Service(PaaS)
利用者が自らのアプリケーションのためにホスティングされた環境を利用する。 - Infrastructure as a Service(IaaS)
利用者は「基本的なコンピューティング資源」、例えばプロセッサやストレージ、ネットワーク、ミドルウェアなどを利用する。
続いてデプロイメントモデルも4種類定義しています。
- Public Cloud
インターネット経由でサードパーティから利用できる性格付けをされたもの。 - Private Cloud
Public Cludのように弾力性のある運用が可能な利点を備えつつ、特定の組織の内部で管理され、Public Cloudが課しているようなネットワーク帯域幅やセキュリティ、契約などの制限がない。 - Community Cloud
共通の方向性、役割を備えたグループによって管理されたもの。 - Hybrid Cloud
PublicとPrivate Cloudの相互運用。
Community CloudやHybird Cloudまで含めた点は興味深いですね。そして、ユースケースのシナリオが8種類紹介されています。少し長いのですが、図を引用します。
特に、エンタープライズとクラウドとの連係や、ハイブリッドクラウド、クラウドベンダを変更することなどがシナリオに含まれている点が、Open Cloud Manifestoのチームが中心になって作ったことを感じさせます。
ドキュメントの中では、この8種類のシナリオ1つ1つについて想定されるさまざまな要件を詳細に分析しています。
ドキュメントの結論とは
ドキュメントの最後に、想定したユースケースから導き出した今後のクラウドの要件として、以下の要素が求められるだろうとしています。
- 汎用の仮想マシンフォーマット、データフォーマット、API
- クラウド管理
- セキュリティ
- 設置位置
すなわち、クラウドの相互運用性のためには汎用の仮想マシン、共通のデータフォーマット、APIなどが必要で、かつ監視、計測、サービスレベル保証のための管理、ベンチマークなどが求められる。またアプリケーションや顧客の要求に合わせたさまざまなセキュリティも備えていなければならない。と同時に、物理マシンがどこに設置されているのかという情報も、多くの政府による規制にとって不可欠だろう、と結論づけられています。
Cloud Computing Use Cases Whitepaper
このエントリはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
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