VMwareが「VMware HCXテクノロジー」発表。オンプレミスのvSphereからvMotionでダウンタイムなくクラウドへの移行を実現。IBMなどがクラウドサービスで提供
VMwareは9月11日からスペインのバルセロナで開催しているVMworld 2017 Europeで「VMware HCXテクノロジー」をIBMとともに発表しました。
VMware HCXテクノロジーは、オンプレミスのVMware環境とVMwareベースのクラウドサービスをシームレスに接続、vMotionや仮想ネットワークのオーバーレイ機能、データレプリケーション機能などを用いて、ワークロードのクラウドへの移行をダウンタイムなく実現できる技術です。
ハイブリッドクラウドの構築では、オンプレミスとクラウド間でのアプリケーションのポータビリティや、ローカルネットワークと広域ネットワークなどが混在することによる複雑なネットワーク構成などが課題とされています。
VMware HCXテクノロジーは、こうした課題を容易に解決するためのもの。
オンプレミスで複数のvSphereのバージョンが混在した環境などから、最新のVMware環境を備え、冗長化やセキュリティ対策も充実したクラウドへの移行が容易になるとしています。
VMware HCXテクノロジーはIBMなどがサービスとして提供
VMware HCXテクノロジーは、IBMやOVHなどVMwareのパートナーがクラウドサービスとして提供します。
IBMは昨年2月にVMwareと戦略的提携を行い、IBM Cloud上にVMware環境を構築し提供することを発表しています。VMware HCXテクノロジーを用いたサービスは、IBM CloudのこのVMware環境をベースに提供されます。
またOVHはもともとVMwareが展開していたクラウドサービスであるvCloud Airの売却先であるため、同社がVMware HCXテクノロジーを提供できるのは当然といえます。
AWSとIBMがVMwareの二大クラウドパートナー
VMwareは先月行われた米国でのVMworldの初日の基調講演で「VMware Cloud on AWS」の提供開始を発表する一方、今回の欧州でのVMworldの初日の基調講演では、 IBM CloudとのパートナーシップによるVMware HCXテクノロジーの提供を発表。米国と欧州での内容の違いが際立ちました。
VMwareにとってAWSとIBMはパブリッククラウド市場における二大パートナーです。
AWSではVMwareがそのインフラを借りて、VMware自身がクラウドサービス「VMware Cloud on AWS」を提供。一方IBMはIBM自身がVMwareのソフトウェアを採用し、IBMが自社クラウドサービスとしてVMware環境を提供します。
これはAWSにとってはVMwareのおかげでIaaSの利用者が増えてスケールを拡大できるメリットがあり、IBMにとってはオンプレミスのVMwareユーザーを自社クラウドのユーザーへ取り込めるメリットがあり、VMwareにとってはユーザーがどう転んでも自社ソフトウェアとエコシステム内にとどまってくれるというメリットがある、三社それぞれにメリットを見いだせる枠組みといえます。
(さらに補足すると、VMwareはグループ会社であるPivotalのKubernetes対応製品を通じてGoogle Cloudとのポータビリティを実現している点も見逃せません。そして仮想化市場においてもハイブリッドクラウド市場においても、同社のライバルであるマイクロソフトとはほとんど接点がない点も注目に値するでしょう)
VMwareがパッケージソフトウェアのビジネスモデルからクラウド時代のビジネスモデルを模索してきた中で、これほど巧妙な座組を実現できた点は高く評価できるのではないでしょうか。
そしてこの座組が思惑通りに進んでいくのかどうかが、今後の注目点といえるでしょう。
※ 参考:VMware、同社技術に深くコミットするクラウドプロバイダとしてIBM、富士通、Rackspaceなど「VMware Cloud Verified」5社を発表。
※ 参考:VMwareがデルを買収する可能性、CNBCやBloombergなどが報じる。デルは資金調達のため再上場を目指していると
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