IBM、SoftLayerのデータセンターを年内に国内設置発表。ワールドワイドでデータセンターなどに1200億円の投資、クラウド市場での巻き返しはかる
米IBMはグローバルでクラウドのデータセンターを拡充するために12億ドル(1ドル100円で1200億円)の投資を行うと発表しました。
年内に日本をはじめ、中国、香港、ロンドン、インド、カナダ、メキシコシティ、ダラスなど世界15カ所でデータセンターを新規開設。これでIBMのクラウドデータセンターはワールドワイドで40カ所になるとのこと。
来年2015年には中東とアフリカでも開設する計画があることを明らかにしています。
クラウド市場で劣勢に立たされるIBMの危機感
IBMは昨年、米中央情報局(CIA)が600億円を投じるプライベートクラウド構築への入札で、Amazonより価格は4割近く安かったものの技術面と実績面でことごとくAmazonより低評価しか得られず失注した、ということを経験しています。
これは、大企業や政府機関へと本格的に浸透しつつあるクラウド市場でIBMが劣勢に立たされている状況を象徴する出来事でした。現在のIBMが相当の危機感を持っていることは間違ありません。
IBMは昨年6月にクラウドベンダーのSoftLayerを買収しています。今回のデータセンター拡充は、従来のIBMのクラウドに対してではなく、買収したSoftLayerに対するものと見られます。
エンタープライズ向けの特徴を備えたSoftLayer
SoftLayerはIaaS型のパブリッククラウドで、その特徴はクラウド内で物理サーバが利用できることと、データセンター間の通信が無料であることです。
物理サーバは仮想サーバと比べてより高い性能が発揮でき、しかも物理的にほかのユーザーと分離されたサーバ環境が構築できるため、より高いセキュリティが期待できます。
データセンター間の通信が無料なのはSoftLayerのデータセンター間が専用回線で接続されているためで、グローバルに情報システムを展開する企業にとって拠点間の情報が高速かつセキュア、しかも低コストで運用できることになります。
これらの特徴はいずれもエンタープライズ系のユーザーにとって魅力的であり、しかも現在のAmazonクラウドにはない機能です。IBMがSoftLayerを買収相手に選んだ大きな理由でもあるでしょう。
IBMはこのSoftLayerのクラウドを基盤に、サービスレベルの保証やモニタリング、セキュリティパッチ対応、セキュリティスキャンなど基幹業務向け運用管理サービスの「SmarterCloud Enterprise+」も提供する予定です。現在のSoftLayerでは、オンラインサービス系や中堅中小のWebホスティングなどが中心ですが、IBMの得意とするエンタープライズ系に対する本格的なマーケティングや営業展開が予想されます。
OpenStack対応の今後は
一方でIBMは昨年3月、つまりSoftLayerの買収前に、パブリッククラウドからプライベートクラウドまですべてのクラウド基盤をOpenStackで統一すると発表していました。
IBMとしてはこれにより相互運用性を高め、エンタープライズ市場へ切り込んでいく戦略だったと思われますが、現在のところSoftLayerのクラウド基盤はOpenStackベースではありません。昨年末に来日したSoftLayer COOのGeorge Karidis氏によると、SoftLayerをOpenStackのAPI互換にするプロジェクトには取りかかっているようですがリリース時期は明らかにされていません。
IBMがOpenStackを支持することや自社のプライベートクラウド製品へ採用することについては変わらないと思われますが、パブリッククラウドへの適用についてはトーンダウンする可能性があります。
いずれにせよ、IBMがクラウド市場で本格的な巻き返しをはかるためには、今回の発表を第一弾として、今後様々な強化策が継続的に投下されていくことになるでしょう。
下記は今回のプレスリリースの中で発表されたインフォグラフィックです。
あわせて読みたい
NetAppが2つのフラッシュストレージ製品を展開。激化するフラッシュストレージ市場を勝ち抜くため。NetApp Innovation 2014
≪前の記事
IBM、x86のメモリバスにフラッシュメモリを直結した新アーキテクチャのx86ハイエンドサーバを発表。最大で12テラバイトの超高速ストレージ統合サーバ