JavaFXをマルチプラットフォームUIとして再定義──JavaOne 2012 Tokyoから
JavaOne 2012 Tokyoのキーノートでは、Java上のUIフレームワーク「JavaFX」の説明に多くの時間を割きました。
JavaFXは、登場時点では「RIA(Rich Internet Application)の一種」との位置づけでした。しかし、最新のJavaFXはまったく異なり、「クライアントJavaの新たなUIフレームワーク」としての性格を強めています。Oracleが旧SunのJavaチームを買収した後、JavaFXは再設計、再実装をしたとのことです。
新しいJavaFXの位置づけはUIフレームワーク
新しいJavaFXは、プラットフォーム独立の新たなUIフレームワークと位置づけられています。Windows、MacOS X、Linuxとデスクトップ環境はもちろん、iOSのようなスマートデバイスにもその対象を広げようとしているのです。マルチタッチなどの機能も予定しています。キーノートでは「(Javaの古いUIフレームワークである)Swingからも移行できる」と説明し、JavaFXが今後のJavaのUIの本流になると位置づけました。2013年に登場予定のJava SE8は、JavaFXをバンドルする予定です。
JavaFXは、登場時点では旧Sun Microsystems社の独自技術との性格が強かったのですが、今ではその実装を「OpenJFX」としてオープンソースにするプロジェクトが始まっています。オープンソースにした後、Eclipseプラグインなどがコミュニティ主導で作られているとのことです。
JavaFXのデモンストレーションでは、リアルタイムな3D表現や、多くのビジネスチャートのサポートなどを強調しました。そして、スマートデバイスも視野に入れていることを示す象徴的なデモンストレーションが、「JavaFX on iOS」です。iPadの上で、JavaFXによるGUIアプリを動かそうというのです。
iOSについてはAppleと話し合いをしている
ここで一つの疑問が出てきます。Appleは、iOS上のアプリの開発では、Appleが認めた言語処理系以外を使うことに厳しい姿勢を示していることです。ただし、Oracleによれば「Appleとは話し合いをしている」とのことで、「実行環境とアプリがバンドルされている形態であれば問題はない」との回答を得ているそうです。
このiOS版は、現時点では顧客のフィードバックを得るための試作品との位置づけです。多くの企業ユーザーがiPadなどスマートデバイスに強い関心を示していることを考えると、これはただの技術的な挑戦ではなく、ビジネスに結びつく動きと考えた方が良さそうです。Javaクライアントをスマートデバイスでも動かしていこう、というOracleの姿勢が感じられます。
Oracleが、エンタープライズ向けシステムのクライアント・アプリが、WindowsでもiOSタブレット(iPad)でも同様に動く、といった将来像を考えていることは想像に難くありません。また、Oracleは、Java SEをより多くのデバイスで動かしていく、との構想を持っています。
ところで、iOS版のJavaFXを見た後ではAndroid版JavaFXの開発予定が気になるところですが、これについては「ノーコメント」でした。Oracle対Googleの訴訟が続いていることが関係しているのでしょう。
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(著者の星 暁雄(ほし あきお)氏はフリーランスITジャーナリスト。IT分野で長年にわたり編集・取材・執筆活動に従事。97年から02年まで『日経Javaレビュー』編集長。08年にインターネット・サービス「コモンズ・マーカー」を開発。イノベーティブなソフトウエア全般と、新たな時代のメディアの姿に関心を持つ。 Androidに取り組む開発者の動向は要注目だと考えている)
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