クラウドのおかげで、アプリケーションは「デバイスにインストールされるのではなくキャッシュされる」ことになるだろう、とレイ・オジー氏
ウォールストリートジャーナルが先週主催したイベント「D8 Conference」。スティーブ・ジョブズが登場し、iPadのアイデアはiPhoneよりも先だったこと、iPadでFlashのサポートをしない理由、Androidとの競合などについて語ったことで話題になりました。
このD8 ConferenceにはそのほかFacebook CEOのMark Zuckerberg氏、映画監督のJames Cameron氏など多くの著名人がスピーカーとして登場しています。そしてマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOとレイ・オジーCSO(Chief Software Architect)も登場し、クラウドについて語っています。
アプリケーションはインストールされるよりむしろキャッシュされる
公開されているインタビューの内容からポイントを紹介しましょう。
インタビュアーがバルマー氏とオジー氏の二人に、マイクロソフトはPC市場では圧倒的だが、いまはクラウドに全力を傾けていると言っている。どこに機会を見いだしているのか? と質問。オジー氏は次のように答えています。
「いまは多くの変化が同時に起きている。私たちはインターネットにつながっており、あらゆるデバイスがネットでつながっている。そして業界は標準を基にすることで一致している。エンタープライズITの世界でもこうした変化が起きているのだ」
そして、情報共有を基盤にしたエンタープライズITの中で、クラウドへの転換とモバイルデバイスへの接続にマイクロソフトにとっての機会があるとしています。
バルマー氏は「いまクラウドやHTML5が話題になっているとしても、PCの重要性はしばらく続くが、最後にはクラウドが推進役となり、スマートなクラウドとスマートなデバイスの接続、ローカルに利用されるアプリケーションが登場する」と割って入り、「いまのトレンドはよりスマートなクライアント(デバイス)であり、省機能化には向かっていない」と補足。
オジー氏はそれに関して「どのデバイスを使っていたとしても、クラウドのおかげでアプリケーションはインストールするというよりむしろキャッシュされるようになるだろう」と発言しました。
クラウドデバイスはシンクライアント化するのか
オジー氏のこの発言はさりげないものですが、マイクロソフトがこれからのアプリケーションの方向性をどう考えているのか、その一端を示しているように思えます。
つまり、将来のアプリケーションはクラウドから配信されること、そしてそのアプリケーションはインストールする必要がなく、Webアプリケーションのようにすぐに利用できることを示唆しているようです。そしてローカルでの利用ではそのままキャッシュされるだろうと。
しかも「どのデバイスを使っていたとしても」と前置きしているように、オジー氏はこの発言にあたりPCも含めたデバイスを念頭に置いている可能性があります。
アプリケーションをインストールしないデバイスは一般的にシンクライアイントに分類されるでしょう。バルマー氏は「クライアントはスマート化に向かっている」と、どちらかといえばあらゆるデバイスがいまのPCのようなファットな方向へ向かっていると言っていますが、これはOSとローカルアプリケーションのビジネスモデルを維持したいバルマー氏のポジショントークのように聞こえます。一方でオジー氏は、将来的にはクラウドに接続するデバイスとしてはPCも含めてシンクライアントモデルが主流になると考えているのかもしれません。
さて、インタビュアーはオジー氏に「タブレット形式のデバイスは成功すると思うか?」と質問しています。オジー氏は次のように答えています。
「タブレットモードのパッド型フォームファクターは成功しつつあるように思う。リビングルームに置かれるアプライアンス型のスクリーンのようなものが台頭しつつある。もうそれはフィクションではない。消費するための製品と、制作する製品は基本的に異なる製品であり、こうしたデバイスは両方とも存在する必要がある」