仮想化が変えるサーバ。なぜIBMの新技術はx86サーバの搭載メモリを飛躍的に拡大させる道を選んだか

2010年3月4日

日本IBMが3月3日、「次期x86サーバーに搭載される革新的新技術」と銘打って発表したのは、x86サーバに3TBという巨大なメモリを搭載可能にする「eX5」と呼ばれる技術でした。さっそく複数のメディアでニュースとなっています。

eX5は同社のx86ハイエンドサーバ向けの新しいアーキテクチャの総称です。そのeX5アーキテクチャの要素として、インテルのサーバ向けハイエンドCPUとして発表が予定されている「Nehalem-EX」(コード名)に対応したIBM独自のメモリー拡張技術「MAX5」があります。これが最大3TBのメモリ搭載を可能にする技術です。

Nehalem-EXでは、それ以前のCPUよりもメモリアドレスが拡張され、物理アドレスが44bits、最大で2TBまで搭載可能になります。IBMは、同社がメインフレームなどで培ってきた技術を投入してこれをさらに拡張。QPIと呼ばれるチップ間のインターコネクトによる高速通信接続により、標準のメモリとまったく同等のアクセス速度のままで、最大3TBまで物理メモリ空間の拡大を実現しています。

この3TBの物理メモリは「Nehalem-EX(の物理アドレス)に対応したOSなら、特別なドライバなどなしでそのまま使える」(IBM System x事業部 エバンジェリスト 早川哲郎氏)とのこと。

同社はこの技術に自信を持っており、「おそらくメインフレームなどの経験がない他のベンダーでは、このような技術は開発できないのではないか」(早川氏)と発言しています。

仮想環境ではこれまでよりメモリ容量が重要となる

IBMがx86サーバの新技術として、大容量メモリの搭載を打ち出した理由は主に2つあります。

1つはCPU性能が頭打ちになりつつある中で、CPU以外の部分での性能向上へとフォーカスが向いたこと。そしてもう1つは、企業向けサーバのユースケースとして想定される仮想化による利用では、CPUよりもメモリ容量が性能のボトルネックとなっているケースが多い、ということです。

特に仮想化においては、CPUの性能は使い切っていないのにメモリが足りないためにこれ以上仮想マシンを載せられない、というケースは非常に多くみられるようになってきているといわれています。それはすなわち仮想化ではCPUとメモリの利用バランスがこれまでの業務アプリケーションとは異なってきており、仮想化が前提となるこれからのサーバにおいては、メモリ容量の重要性が非常に高まってきていることを示しています。

すでに搭載メモリの拡張にはシスコが取り組んでおり、同社のサーバでは独自のASICで搭載可能な物理メモリを384GBへと拡張しています。同社のサーバは仮想環境に最適化したものとして開発されており、やはり仮想環境ではより多くの搭載メモリが必要となると考えている点で、IBMと方向性は一致してます。

しかし仮想化に適したサーバの進化としてのメモリ容量の拡張は1つの方向でしかありません。それ以外にも仮想化は、サーバ同士の接続のあり方、ストレージとの接続の方法、サーバやアプリケーションの管理のあり方、サーバのコスト、そして「サーバは「単体」から「群体」へと進化中」で書いたように、システムとしての信頼性の確保の仕方などなど、さまざまな面に大きな影響を与えていくでしょう。

今後どのような技術でサーバを進化させていくのか、ベンダごとにそれぞれの強みを打ち出した技術開発が行われ、これからしばらくは多様な進化の方向性がサーバに見られるのではないかと思います。

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